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2010年10月10日

巨大帝国が崩壊するとき

史上幾多の帝国が崩壊しては、新たな帝国が勃興してきた。ではその崩壊に際しては、どのような状況になるのだろうか?
というのは、巨大帝国の崩壊は、決して歴史上の物語ではなく、現在も予想されるからだ。例えば、現代の巨大帝国であるアメリカ や中国は、今後どうなるのか?
少数民族を多数抱え、農民などの暴動が多発する中国、多民族を人工的な観念(自由・個人・夢・・・)で統合しているアメリカ。近いうちにも予想されるドル暴落→経済崩壊に伴い、この2大巨大帝国はどうなるのか?
今回は歴史を遡り、巨大帝国が崩壊した際の状況を、特に古代からの記録が残っている中国の歴史から追ってみたい。特に今後を占う意味で帝国崩壊の際に秩序崩壊(→殺し合い)が起こるのかどうかという点で見てみたい。

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●1.中国(シナ)の事例
中国は税の取り立てのために歴代王朝による戸数調査が必ず行われた。そのために信憑性の高い人口の記録が残っおり、人口の推移を見ることができる。
それはかなり人口激減を繰り返す衝撃的な人口動態である。そこから歴代の中華帝国崩壊の際の秩序崩壊の状況が読み取ることができる。
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・2世紀頃の後漢の崩壊時人口が約5649万人→763万人という9割近い人口崩壊が起こっている。
・8世紀ごろの唐崩壊時、17世紀の明崩壊時にも似たような崩壊が起こっている。
・他の時期の帝国・王朝の交代時もそれほどではないが、数割減~半減程度の崩壊が度々起こっている。
・18世紀末から人口が億単位に急増し始めるが、約4億人に達した時の19世紀の太平天国の乱の際にも1億4千万人(4割程度)の崩壊が起こっている。
以上から歴代の帝国崩壊時には、日本人から見たら想像もつかない凄まじい人口崩壊が起こっていることが分かる。
●2.人口崩壊の原因は何か:限界収奪と私権の奪い合い
このような9割もの人口が減ってしまうようなカタストロフィとでも言えるような崩壊は何故起こるのだろうか?また強大な権力と支配機構を持つはずの帝国がなぜ崩壊するのだろうか?
例として2世紀頃の後漢末期の崩壊は、貴族や官僚の搾取→農民の叛乱に始まっている。(後に三国史に至る過程)

光武帝と第2代明帝を除いた全ての皇帝が20歳未満で即位しており、中には生後100日で即位した皇帝もいた。このような若い皇帝に代わって政治を取っていたのは豪族、特に外戚であった。第4代和帝以降から、外戚は権勢を振るうことになった。宦官の協力を得た第11代桓帝が、跋扈将軍と揶揄される程専横を極めた外戚梁冀を誅殺してからは完全に宦官が権力を握るようになった。
(中略)
外戚、宦官を問わずにこの時期の政治は極端な賄賂政治であり、官僚が出世するには上に賄賂を贈ることが一番の早道だった。その賄賂の出所は民衆からの搾取であり、当然の結果として反乱が続発した。その中でも最たる物が184年の張角を首領とした黄巾党の乱であり、全国に反乱は飛び火、混乱に乗じて董卓が首都洛陽を支配し少帝弁を廃位して殺害、この時点で後漢は事実上、統治機能を喪失した。

  リンク より
後漢の例だけではなく、中国では農民反乱により王朝が崩壊する例が多い。そうなるメカニズムとして推測されるのは、
王朝末期は、華美で退廃的な生活を求める支配層(貴族・官僚含む)が、農民から限界以上の収奪を進めていく。農村は次第に生きるか死ぬかの飢餓状態に陥っていく。
そしてどうしょうもなくなって人民の反乱が起こる。反乱が起こると同様な不満を持つ者の間に瞬く間に広がり、大運動に発展する。それに呼応して地方の勢力や抑えられていた民族も独立し群雄割拠・軍閥割拠の状態に陥る。王朝の崩壊(力の原理崩壊)→内乱・秩序崩壊が始まり、掠奪、戦乱に加えまともに生産できなくなることで飢餓に陥り、人口の大崩壊に至ったものと考えられる。

●3.それに対して共同体という安定基盤が存続している社会では?
このような巨大帝国が崩壊する際の構造は、日本などと比較してみるとよく分かる。
日本では数割の人口が崩壊するような現象は戦国時代でも起きていない(下図参照)。日本は村落共同体が自分たちで自治を行っており、支配部族はその自治を前提に、そこから税収を上げさせるという形で支配を行ってきた。
このような社会では、上部構造の王朝が崩壊しても、下部構造の共同体という集団はしっかり残っており、秩序は崩壊することがない。従って王朝の交代も支配部族間の徴税を巡る闘争にしかすぎなくなる。

また縄文以来の均一な潜在思念を持つ日本人の中で、支配部族も日本人全体が作り出す共認域を超えて、限界を超えるような収奪はできなかったとも言える。
ex下級武士が決起した明治維新でも、秩序維持を優先して、合意の元に大政奉還を成し遂げたことは日本人の体質を何よりも物語っているように思う。(中国では負けたほうが一族郎党皆殺しにされる事が当たり前で、それ故に一族の命運を賭けた総力戦となる。)
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  日本の人口リンク よりお借りしました。
このように共同体という安全基盤がしっかりしている社会では、下部構造の集団が秩序を保ち、社会全体が秩序崩壊に至ることはないと考えられる。それは昔からの部族共同体が残るイスラムや農村の村落共同体が残る東南アジアでも同様なことが言えるだろう。
※中国の農村部は村落共同体ではないのか?
→中国では王朝末期にex清末期の「太平天国」、後漢時代の「太平道」(黄巾軍)、明を建国した「白蓮教」などの秘密結社がたびたび登場し、反乱軍を組織する。これらの結社は元々平時には宗教の結社であり、相互扶助機能を持っていた。
しかし、そのような結社が存在していることから類推すると、すでに共同体的な繋がりはかなり破壊されているのではないだろうか?(但し、これらの結社の基盤は主に都市部である可能性もある。要調査)
●4.帝国の統合原理:力の原理と人工観念によって多民族が統合されている構造
前回の記事 『2600年前頃、古代宗教・思想の世界同時成立期・・・』 に示したように、巨大帝国は人工的な観念によって雑多な多民族が統合されている。アメリカなら自由・平等・民主、中国なら儒教思想をベースに共産主義で統合されている。
しかしその前提をなすのは強大な軍隊である。大多数の人民の反乱により力の原理が崩れたとき、建前の人工的な思想・観念は取り払われ、たちまちのうちに帝国は統合軸を失い、瓦解し、多民族乱立の状態に陥りっていく。そして再び力のぶつかり合いによって統一するまで長い時間を要することになる。
いわば巨大帝国は力(武力)と人工的な観念で統合された、ある意味極めて脆弱な基盤の上に構築されているとも言える。
●5.現代の帝国はどうか?・・・・市場原理がより急激な崩壊をもたらす。
歴代の中華帝国は主に人民の反乱によって崩壊した。では、現代の帝国はどうか?現代でも基本的な構造は同じであり、そこに市場原理が塗り重ねられている構造と考えられる。
21世紀の帝国は、この市場原理がよってより崩壊のスピードを速める可能性が高い。市場原理によってアメリカ・中国は貧富の差が極めて大きく、人々の不満が高く、今でも暴動や殺人は頻発している。
この状態に例えばドル暴落・紙幣暴落→農産物高騰で食糧などが手に入らなくなったとき(市場原理なので、食糧が高騰すれば、農民は値段上昇が終わるまで出し惜しみする)、多くの人々が本能的にも追い詰められて人々は掠奪へと向かい、帝国は崩壊していくだろう。
現代の巨大帝国が崩壊する時、力の空白が生まれる。その時に生き残った日本とその他の国々が力の原理→私権統合に代わる新たな方向性を打ち出せるか?それができなければまた大混乱の後に、力で制した帝国が復活してくるだろう。しかし、史上初めて貧困を脱出し豊かさを実現した日本や欧州の一部が協力し、力の原理に代わる秩序維持を目指せば新たな可能性は十分あると思う。
by Hiroshi
参照
 『真実の中国4000年史』 杉山徹宗
 9/23なんでや劇場 (5)~破局後の後進国の私権意識をどうする?

投稿者 ihiro : 2010年10月10日 List  

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